クロスの減価償却計算方法
「室内に借主さんの過失等で汚損破損がある場合は補修費を請求できます。但し、経年劣化自然損耗は貸主さんの負担です。国土交通省のガイドラインに基づき減価償却を考慮して下さい。」
とか、よく言いますけど、具体的な計算方法はどうなんだろう?
わからない方も多いと思います。
賃貸不動産経営管理士の試験問題にも出ていたので、今日はクロスの減価償却計算方法について、具体的に計算してみます。
具体例1
Aさんは新築から3年経ったマンションに入居し1年で退去しました。入居中に子供がクロスを汚してしまいました。工務店にクロスの貼り替え見積を取ったところ金額は80,000円でした。(貸主は室内がきれいだったので、Aさんが入居する前にクロスの貼替をしていません。)
まず、ガイドラインによるとクロスの耐用年数は6年です。
クロスは貼替えてから通算4年(3年+1年)経過しています。
と言うことは、6年ー4年=2年 これが残価分になります。
もっとわかりやすく言いますね、
このクロスは4年使った中古で今の価値は定価の2/6しかないと言う意味です。
(1年で16.66%(1÷6)づつ価値が減少していくと考えて下さい。)
その中古のクロスを汚したので、「中古分の価値を弁償してもらいますよ!」と言うことです。
Aさんに請求できるのは80,000円×2年/6年=26,666円となります。
具体例2
Bさんはクロスを貼り替えた部屋に入居して1年8ヶ月で転職のため退去しました。壁にポスターを貼っていてはがしたときにクロスがめくれてしまっています。工務店に見積りを取ると、貼り換え費用は15,000円でした。このときBさんに請求できる金額は、
72ヶ月(6年)-20ヶ月(1年8ケ月)=52ヶ月が残価分です。
ですから、15,000円×52ヶ月/72ヶ月=10,833円がBさんに請求できる金額です。
具体例3
Cさんは新品のクロスに貼り替えた部屋に入居して3年後に引越しをしました。キッチンの壁には冷蔵庫を設置していましたが、引越し業者さんが冷蔵庫を搬出すると壁に冷蔵庫のヤケ跡がついていることに気がつきました。この場合に大家さんから請求される原状回復費用はいくらか?
3年経過しているので、壁一面の貼り替え費用の50%を請求されると考えた方が多いと思いますが、国土交通省のガイドラインでは、一般的な生活をしていくうえで避けられない汚れであると考えられ、大家さんの負担で補修をします。Cさんは補修費を負担しなくていいと言うことです。
※上記金額には、実際に工務店に発注する場合の諸経費や交通費等は含まれていません。
注意すること
補修範囲についてですが、クロスは巨大なサランラップ状の巻物になっていて、幅は90cmです。
なので、基本は汚した部分一面の貼り換えになります。つまり天井から床までの高さ×幅90cmの長方形が一面と言うことになります。
但し、喫煙等で部屋全体が変色しているような場合は部屋全部貼り換えとなることが多いです。
(注1)また、耐用年数が過ぎていても十分きれいで使用可能な状態にある時は落書き等を落とすための費用は借主に請求出来ることもあります。
ネットの掲示板などでは、「クロスの耐用年数は6年なのでどんなに汚しても1円しか請求できない」との記載もありますが、そうとは限りません。
耐用年数ですが、クロスのほか、カーペット・クッションフロアーも6年です。
入居者とトラブルにならないよう、気をつけて計算して下さい。
(注2)耐用年数を超えたクロスは基本的には価値はないものと考えますが、善管注意義務違反のようなケースでは、過去の判例で貼り替え費用を請求できたものもあります。
「経過年数を超えた設備等を含む賃貸物件であっても、賃借人は善良な管理者として注意を払って使用する義務を負っていることは言うまでもなく、そのため、経過年数を超えた設備等であっても、修繕等の工事に伴う負担が必要となることがあり得る」
とあります。実務ではタバコのヤニ・クレヨンによる落書きなどがこれに当たるでしょう。
契約書に室内は禁煙ですと記載しておくと、更にいいと思います。
僕の経験では、クロスは6年経過しても綺麗に使って頂いている入居者もいます。
こんな時は貼り替えずにそのまま募集しています。
なので、故意過失や非常識な使い方をされた入居者には、入居年数を考慮して費用を請求するといいでしょう。
退去時の原状回復費用の請求(敷金精算)は、フローリング補修や畳表替えなど減価償却を考慮しない箇所もあり複雑なので、経験豊富な賃貸管理会社にお任せすることをおすすめ致します。
賃貸管理でお困りの際は、賃貸不動産経営管理士にいる当社へお気軽にご相談下さい。
ずんだもんの動画がとても参考になるので貼っときますね。
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